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第11回 人生観 [青年期]

 自分にとって大切なものは何かとという「価値観」が作られると、それをもとに「人生観」が形作られていきます。これができてないと、地に足のつかない出たとこ勝負の流され人生が始まる、と書くと大げさでしょうか。
 職場にやってくる生命保険の営業の方が、「あなたのライフサイクル」というものを勝手に作って持ってきたことがあります。まだ講師という立場で、正式な教諭になっていない時でしたから「よけいなお世話」と腹を立てたりしたものです。なぜならば、その表には私の価値観が何も反映されていなかったからです。いくつで結婚して、いくつで子どもができて、その子どもが一人前になり、定年退職した後は……という「ライフサイクル」をもとに生命保険に入るとどんなに得かということを示すためのものですから仕方ありませんが。
 自分の生き方は自分で決める部分と人によって決められる部分と、いろいろな要素がまじりあって決まっていきます。思わぬアクシデントもあれば、思いもよらない幸運に見舞われることもあるでしょう。
 仕事をするにしてもそれ以外のものを大切にするにしても、そこに「生きがい」がないとおもしろくありません。実際、僕たち教師は赴任する学校によって生き方が大きく変わります。「夜回り先生」で知られる水谷修さんは定時制高校に転勤したことが転機になって、夜の街をまわって若者たちと向き合うという生き方がひらけてきたわけです。僕は定時制高校や中学校の講師を経て、正式に採用されたときには知的障碍のある生徒のための特別支援学校(当時は養護学校と呼ばれていました)に着任しました。そのため、次に転勤した高校でも、現在勤務している高校でも、障碍のある生徒と関わる仕事がよくまわってきたものです。僕は大学時代に障碍児教育について学んできたわけではありませんから、障碍児と関わるという仕事は自ら選び取ったものではありません。教師になるという決断は自分でしたけれども、障碍児と向き合うということは教育委員会の人事担当者に決められたようなものです。
 しかし、嫌だ嫌だと思いながらも障碍児教育について何年もの経験が蓄積されていくと、やりがいも出てきますし、転勤した後でもいろいろな経験をすることができました。何よりも、「教育とは何か」という根っこのところを障碍児教育でつくりあげ、高校に転勤してからも、その本質は変わらないことを確信したことは大きかったと言えます。
 教師としての価値観を確立したからこそ、なんだかんだで30年間もこの仕事を続けていくことができたのではないかと思っています。「価値観」をもとに「人生観」が作られるというのは、そういうことだと僕は考えています。若いみなさんにはまだまだ分からないことかもしれませんが、頭の片隅に置いておいてほしいと思います。

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