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第18回 プラトン 2 [古代ギリシア]

 プラトンの想像力には元ネタがあります。宗教であり、神話です。プラトンは私たちは死後に他の世界に生まれ変わり、新たな生を得てはまた別の世界を遍歴すると考えていました。なにやら現代のSFやファンタジーに登場する多重世界を思わせますね。
 そのさまざまな世界の中の一つに「イデア界」というものがあるとプラトンは考えていました。その世界にはすべてのものの本質が集まっていて、その他の世界……私たちの生きている世界も含めて……にあるものは、すべてがイデア界から投影されたものだというわけです。例えばイスというものがありますね。イスには足が4本あるものもあれば、キャスターがついたもの、手すりのあるもの、円柱形をしたものなど様々な形をしています。
 私たちは、様々な形のイスを見て、それがすべてイスであると理解します。形が違うから別物だなどとは思いません。なぜでしょうか。プラトンは、それは私たちが現在の世界に生まれる前に、一度はイデア界に生きた経験があり、「イスのイデア」を知っているからだと考えました。そのものの本質を知っているから、どんな形をしていてもそれがイスであるとわかるのです。
 イデア界にある様々なイデアのうち、最も重要なものは「善のイデア」であるとプラトンは考えていました。「善のイデア」を頂点にしたピラミッドができているというのです。私たちはイデア界にいた時の記憶により、この善のイデアを求める強い気持ちがあり、その気持ちのことを愛(エロース)と呼びます。
 現代の私たちから見たら、イデア界なんてないよと笑い飛ばしたくなるような話です。イデア界の存在を証明することも不可能でしょう。だから、このイデア界の例えというのは現代ではわかりにくいところではないかと思います。しかし、プラトンの生きた時代には、神話や神の託宣が何よりも優先される時代でした。ですから、こういう例えがわかりやすかったのかもしれません。
 ですから私たちは、この例えからプラトンが求めたものは何かということを考えなければなりません。それは、すべての物事の本質を求める心が人にはあるということであったり、真理とは何かということを考えることにより人は幸福になるということを、このイデア界の例えで伝えたかったと言えるでしょう。
 プラトニック・ラブという言葉があります。肉体的な欲望ではなく純粋に人のことが好きになるという感情のことを示しています。プラトニック、つまりプラトン的な愛というものは、純粋に美しいものを追い求めるエロースであるということからきています。
 プラトンの考えた愛は、真理を求める心である、という理解でよいのではないかと僕は思います。ただ、イデア界という発想はなかなかすごいなあと感心してしまうのですが。

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