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第6回 モラトリアムとアイデンティティ [青年期]

 今回は「モラトリアム」と「アイデンティティ」について書きます。どちらも心理学者エリクソンの考えた「青年期」の特徴です。
 まずは「モラトリアム」から。これは「猶予」という意味です。子どもから大人になるまで、待ってくれる期間のことをさします。誰が待ってくれるかというと、社会そのものと考えていいのじゃないでしょうか。
 ただ、この期間、決まった長さでないことが問題です。だいたいは社会に出るまで、つまり学校を卒業して就職するまでを「モラトリアム」と考えるべきなのでしょうが、バブル崩壊後の日本では、ひきこもり、ニート、フリーターなどもその中に含まれてしまうようです。最近問題になっている「中高年引きこもり」となると、もう「猶予」ではなくそれがその人の生き方そのものになってしまっていますね。これはエリクソンも予想してなかったんじゃないでしょうか。ただ、エリクソンはこの「モラトリアム」を否定的にはとらえてません。あくまでも社会に出るための準備期間という位置づけにしています。ところが日本では1970年代おわりに精神科医の小此木啓吾がいつまでも大人になろうとしない人を「モラトリアム人間」と名付けたため、「モラトリアム」という言葉はマイナスな意味合いのものになってしまっています。小此木は「モラトリアム人間」を「アイデンティティを確立しようとしない人間」と定義しています。
 さあ、「アイデンティティ」です。一応日本語に訳すと「自我同一性」となりますが、どういう意味の言葉だかさっぱりわかりませんね。歌手のアグネス・チャンさんは「心のよりどころ」と訳しましたが、これもしっくりこない。なかなかぴんとくる訳語がないんです。僕は、これはたぶん日本人という民族にはアイデンティティなるものが希薄だからじゃないのかとにらんでいます。
 この言葉はいろいろな概念を含んでいます。「心のよりどころ」もそうですし、「個性」という意味もあると思います。僕なりに考えてみましたが、「その人をその人たらしめている性質」みたいに一言では言い切れないものなのです。
 幼いころのあなたと、現在のあなたは同じ人間でしょうか。身長、体重、経験、知識など、幼いあなたよりも現在のあなたの方がいろいろと増えていますね。幼いあなたの写真と現在のあなたの写真を並べてみたら、その差ははっきりわかります。誰もそれが同一人物だとは思いません。ただ、幼いあなたの顔から、現在のあなたの面影を見ることはできます。幼いあなたが成長して現在のあなたになったのですから、何か変わらないものがあるはずです。性格や性質などがそれにあたるかもしれないし、趣味や嗜好かもしれない。だから「アイデンティティ」には「自分らしさ」という意味が強く含まれているといえるでしょう。

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