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第19回 プラトン 3 [古代ギリシア]

 プラトンの哲学はヨーロッパにおける思想の全ての祖といわれます。その理由は2点あります。一つはカントなどの大陸合理論につながる部分、一つは神の国があるというカトリックの教義につながる部分です。それらはいずれもイデア界という考え方と分かちがたく結びついています。
 大陸合理論はいずれここで書く予定ですが、今かんたんにまとめておくと、人には生まれながらに理性という良識があって、それに照らし合わせて善悪の判断ができるというようなものです。これは、人はすべてイデア界の記憶を持っているから、その記憶に照らし合わせて真理を理解することができるというプラトンの考え方からきています。
 神の国に関してもここで取り上げる予定ですが、イデア界と同じく理想の世界が現世とは別にあるという考え方です。これを教義化した教父アウグスティヌスは、「新プラトン主義」という思想の影響を強く受けていますから、かなり意識的にイデア界をキリスト教的に定義したものと思われます。
 プラトンは理想主義の人だと言われますが、それはイデア界という理想世界という考え方をベースに、理想を追求する哲学者が政治家として国家を治めるべきだと考えていたからです。人間の魂は理性・気概・欲望の三部分に分かれているとプラトンは考えました。
 欲望は自分のことを優先的に考えてしまうので、商人に向いています。気概は勇敢ですが力で解決してしまうので軍人に向いています。その点、理性は理想に向かうものなので、政治に向いています。プラトンはそんなふうに考えました。本当はそんな単純に割り切ることなどできないと思うのですが、プラトンにとって大切なのはイデア界ですし、善のイデアなのですから、こういう結論になるほかないのです。
 というわけで、プラトンにとって理想の政治は哲学者が政治家として社会を治めるということになります。僕が疑問に思うのは、軍人や商人は理想を求める存在ではないのだから、哲学者に政治を任せておいても何もいいことはないので反乱を起こしてしまうかもしれないと、プラトンが想定していないことですね。そこがプラトンの哲学の限界なのではないかと思います。高い理想も机上の空論ではどうしようもありません。
 そんなふうに考えたのはむろん僕だけではありません。プラトンはアカデメイアという学校を開き、多くの門人を輩出しますが、プラトンの理想主義に疑いを持ち、現実的な考え方をする者も出てきます。それがアリストテレスです。
 理想主義に偏り過ぎるという難点はありますが、高い理想があり、現実に即しながら理想の姿に近づけていく……これも理想的ですけれど……という生き方は非常に大切なものだと思います。理想主義者であるプラトンの存在は、それ以後の思想に大きな影響を与えていることからも、大きなものであることは間違いないところですね。
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